映画『SISU/シス 不死身の男』感想|このおじいちゃん、すんごい!理屈抜きで楽しむ最強アクション
いやぁ、このおじいちゃん、すんごい!!
映画『SISU/シス 不死身の男』を観て、最初に出てくる感想はこれだと思う(笑)。
第二次世界大戦末期のフィンランド。金を掘り当てたひとりの男が、ナチスの兵士たちを相手に大暴れする。
普通なら、金を奪われて終わりそうな状況だ。
ところが、この男、アアタミ・コルピが普通じゃない。
撃たれても、爆発に巻き込まれても、首を吊られても、なぜか生きている。
いやいや、ちょっと待て!
普通の人間なら、とっくに何回も死んでいるでしょ(笑)。
しかも、武器はツルハシ。最新兵器を持った大勢の兵士を相手に、たったひとりで立ち向かっていくんだから、もう何でもありだ。
最初は「さすがにそんなことあるか!」と思いながら観ているのに、途中からは、その無茶苦茶ぶりが楽しくなってくる。
この映画にリアリティを求めても仕方がない。
むしろ、次はどんな無茶をやってくれるのか。そこを楽しむ作品なんだと思う。
「そんなことあるか!」を何回言わせられるか。
僕にとっては、そんな楽しみ方がぴったりの映画だった。
※この記事には、作品の内容に触れる部分があります。
映画『SISU/不死身の男』のあらすじ|金塊を手にした老人がナチスを敵に回す
舞台は1944年、第二次世界大戦末期のフィンランド。
主人公のアアタミ・コルピは、荒野で金を探し続けてきた男だ。ある日、ついに大量の金塊を掘り当てる。
これでようやく人生が変わる。
ところが、金塊を持って帰ろうとしたところで、撤退中のナチスの兵士たちに遭遇してしまう。
彼らは金を奪おうとするのだが、相手が悪かった。
アアタミは、ただの金探しのおじいちゃんではなかったのだ。
かつて戦場で名を知られた伝説的な兵士。しかも、ひとたび敵と戦うことになれば、とんでもないしぶとさを見せる。
こうして、ひとりの老人とナチスの兵士たちによる、壮絶な戦いが始まる。
あらすじだけ聞くと、よくある復讐アクションのようにも思える。
でも、この映画の面白さは、ストーリーの複雑さではない。
金を奪おうとした側が、いつの間にか、とんでもない相手を敵に回してしまったことに気づく。
その展開が、ひたすら痛快なのだ。
もちろん、第二次世界大戦を背景にした作品だから、戦争の悲惨さを感じる場面もある。ただし、歴史を忠実に再現するタイプの戦争映画というより、戦争末期のフィンランドを舞台にした、かなり大胆なアクション映画と考えたほうがいい。
監督・脚本はヤルマリ・ヘランダー。主人公を演じるのはヨルマ・トンミラだ。
上映時間は約91分。長々と説明を続けず、次々と展開していくところも、この映画に合っていると思う。
難しいことを考えず、まずはアアタミがどこまでやってくれるのかを楽しめばいい。
主人公アアタミはなぜ喋らない? ヨルマ・トンミラの目がすごい
この映画で、もうひとつ印象に残るのが、主人公の口数の少なさだ。
自分の過去を長々と説明するわけでもないし、敵に向かって格好いい決めゼリフを吐くわけでもない。
とにかく喋らない。
ただ黙々と行動する。
そして、何より印象的なのが、その目だ。
もうね、目が怖い(笑)。
普通の映画なら、主人公がどれほど苦しい経験をしてきたのか、セリフや回想シーンで説明することがある。
でも、アアタミの場合は、そういう説明がほとんど必要ない。
表情や視線、傷だらけの体、そして敵を前にしたときの落ち着き。
そうしたものを見ているだけで、「この男、絶対に普通じゃない」と伝わってくる。
ヨルマ・トンミラの存在感がすごいんだよね。
大勢の兵士に囲まれても、こちらは慌てない。
むしろ、追い詰められれば追い詰められるほど、敵のほうが気の毒になってくる。
「おいおい、相手が悪かったな……」
そんな気持ちになる(笑)。
しかも、何でもかんでも力ずくで解決するわけではない。その場にあるものを利用したり、相手の油断を突いたり、とにかく生き残るために手段を選ばない。
もちろん、常識的に考えれば「いや、これは無理でしょ」という場面も多い。
でも、細かい理屈を並べるより、ひとりの男の無茶苦茶な強さを映像で見せる。それがこの映画の作り方なんだと思う。
監督もインタビューで、主人公のセリフを減らすことで、説明に頼らず映像で伝えることを重視した趣旨を語っている。
だからこそ、こちらも余計な説明を聞かずに、アアタミの行動を追いかけられる。
いやぁ、こういう主人公は嫌いじゃない。
自分の強さを自慢するわけでもなく、余計なことを喋るわけでもない。
ただ、やることがすごい。
現実にこんなおじいちゃんがいたら、できるだけ敵に回したくないね(笑)。
ナチスが気の毒になるほどのアクション! リアリティより爽快感を楽しめ
この映画を観ていると、途中からナチスの兵士たちに同情したくなってくる。
いや、本来なら同情する必要なんてないんだけどね。
金を奪おうとし、主人公を追い詰める側なのだから、こちらとしてはアアタミを応援したくなる。
ところが、何度倒そうとしても、この男がなかなか倒れない。
撃たれたら終わり?
終わらない。
爆発に巻き込まれたら終わり?
いやいや、まだ生きている。
敵が「今度こそ倒しただろう」と思ったところで、また現れる。
もう、ナチス側の兵士たちに「頼むから、もうやめておけ!」と言いたくなる(笑)。
アクション映画では、主人公が強すぎると緊張感がなくなることもある。
でも、この映画は、むしろそこを楽しませてくれる。
次は何を使って切り抜けるのか。どうやってこの状況をひっくり返すのか。
ツルハシだけでなく、周囲の地形や、その場にあるものまで利用して戦うから、展開がどんどん大きくなっていく。
そして、敵を追い詰める描写も容赦がない。
血の描写や痛々しい場面がかなりあるので、そこは注意してほしい。日本ではR15+指定の作品だ。
ただ、僕が面白いと思ったのは、単に残酷な映像が続くからではない。
どれだけひどい状況になっても、アアタミが諦めないところだ。
金を奪われそうになっても、体が傷ついても、敵の数が増えても、そこで終わりにしない。
もちろん、現実の戦争は映画のように単純な善悪だけで割り切れるものではない。戦争によって命を奪われた人や、人生を壊された人が大勢いることは忘れてはいけないと思う。
それでも、映画の中で理不尽な相手に立ち向かい、最後までやり返す姿には、爽快感がある。
仕事や日常でストレスがたまっているとき、難しいことを考えずにスカッとしたいとき。
こういう映画も、たまにはいいんじゃないだろうか。
タイトルの「SISU」とは? 撮影中には馬が11kmも逃走した
ところで、タイトルの「SISU(シス)」とは何だろう。
これはフィンランドの人々の精神性を表す言葉として知られている。
日本語でひとことで置き換えるのは難しいけれど、困難な状況でも簡単には諦めない、不屈の精神や粘り強さといった意味合いがある。
そう考えると、このタイトルはアアタミそのものなんだよね。
どれだけ追い詰められても、簡単には折れない。
自分の強さを周囲に見せつけようとするのではなく、黙って立ち上がり、また前へ進んでいく。
ただし、この映画は「諦めなければ必ず何とかなる」という教訓を、きれいに説明するような作品でもない。
むしろ、そんな精神を極端なまでに誇張して見せてくる。
だから、現実離れしているのに、どこか気持ちよく観られるんだと思う。
そして、ここで撮影の裏話をひとつ。
監督のインタビューによると、撮影中には馬が逃げ出してしまい、約11km離れた場所で見つかったことがあったそうだ。
しかも、馬に載せていた小道具が、逃げる途中であちこちに落ちていたという。
いやぁ、映画の中ではアアタミがナチスの兵士たちを相手に大暴れしているのに、撮影現場では馬に予定を狂わされていたわけだ(笑)。
もちろん、馬だって撮影の都合を理解しているわけじゃない。厳しい自然環境の中での撮影だからこそ起きた、予想外のトラブルだったのだろう。
それにしても、11kmも逃げるとは、馬もなかなかの強者だ。
映画の中では主人公が不死身ぶりを発揮し、撮影現場では馬が別の意味で伝説を作る。
こういう裏話を知ると、映画をまた違った角度から楽しめるよね。
まとめ|『SISU/不死身の男』は、何も考えずスカッとしたい人におすすめ!
『SISU/シス 不死身の男』は、細かいリアリティを楽しむタイプの映画ではない。
むしろ、常識をどこまで無視できるのかというくらい、主人公が無茶をする。
でも、それがいい。
アアタミはほとんど喋らない。それなのに、強烈な存在感がある。
そして、敵を徹底的に打ちのめしていく姿には、妙な爽快感がある。
ストーリーはシンプルだし、人物の心理を細かく説明するタイプの作品でもない。
だからこそ、余計なことを考えず、主人公の無茶ぶりを楽しめる。
「いや、そんなことあるか!」
「さすがに今度こそ死んだだろ!」
そんなツッコミを入れながら観るくらいが、ちょうどいいと思う。
ただし、血や暴力の描写はかなり激しいので、苦手な人は注意してほしい。
派手なアクションが好きな人、強烈な主人公が出てくる映画が好きな人、そして『マッドマックス』のように理屈を超えた勢いを楽しめる人には、ぜひ観てほしい一本だ。
そして、タイトルにあるSISUという言葉。
困難な状況でも簡単には諦めない精神。その意味を知ってから観ると、アアタミの異常なまでのしぶとさも、少し違って見えるかもしれない。
まぁ、それにしても不死身すぎるけどね(笑)。
僕はこういう映画、嫌いじゃない。
いや、むしろ好きだ。
普段は人間ドラマや、登場人物の気持ちを深く考えさせられる映画も好きだけど、たまには何も考えず、目の前で起きている無茶苦茶な展開を楽しみたい。
そんなときに、ぴったりの作品だった。
このおじいちゃん、すんごい!!
観終わったあと、まずそう言いたくなる映画です。

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