映画『イントゥ・ザ・ワイルド』の感想|羨ましい。でも、僕には絶対にできない生き方
これは正直、自分でも不思議なくらい複雑な気持ちになった。
主人公クリストファーの生き方が羨ましい。
何もかも捨てて、行きたい場所へ行く。お金にも仕事にも縛られず、誰にも気を使わず、自分の信じた道を進んでいく。
旅が好きな僕としては、そんな生き方に憧れる部分がある。
知らない土地へ行き、見たことのない景色に出会う。予定を決めず、気の向くままに旅をする。そんな時間は本当に楽しい。
だから、彼の気持ちはわからなくもない。
ところが、観ているうちに、だんだん腹も立ってくる(笑)。
家族や自分を心配してくれる人たちを置いて、何も言わずに出ていってしまう。旅先で出会った人たちが親身になってくれても、最後にはまた一人で去っていく。
「もう少し人の気持ちを考えてもいいんじゃないか?」
そんなことを思ってしまう。
僕はパートナーや家族が何より大切だし、意外と寂しがりやでもある。だから、クリストファーのように誰とも関わらずに生きていくことはできないと思う。
でも、困ったことに、そんな彼の生き方に憧れている自分もいる。
羨ましい。でも、腹が立つ。
理解できる。でも、理解できない。
自由になりたい。でも、大切な人とは離れたくない。
この矛盾した気持ちこそが、僕にとってこの映画の一番面白いところだった。
なぜ彼はすべてを捨てたのか?自由を求めた青年の気持ち
クリストファーは大学を優秀な成績で卒業し、将来を期待されていた青年だ。
普通に考えれば、これから安定した人生を歩んでいける。ところが彼は、社会が決めた幸せの形に疑問を持っていた。
お金を稼ぎ、いい仕事に就き、立派な家に住む。
周りから見れば、それが幸せな人生なのかもしれない。でも、彼にはそう思えなかったのだろう。
両親との関係にも問題を抱えていた。家庭の中にあった隠された事情や、親に対する不信感も、彼が家を出る理由の一つだった。
そして彼は、持ち物やお金を手放し、名前まで変えて旅に出る。
ここまで思い切った行動ができるのは、すごいと思う。
僕なんか、旅行に行くときでさえ、あれも必要、これも必要と荷物が増えてしまう(笑)。それなのに彼は、ほとんど何も持たずに旅立ってしまうのだから。
ただ、彼が求めていたのは、単なる冒険ではなかったのだと思う。
誰かが決めた人生ではなく、自分で納得できる人生を生きたかったのだろう。
その気持ちはよくわかる。
年齢を重ねると、仕事や家庭、周囲との付き合いなど、いろいろなものに縛られていると感じることがある。たまには全部放り出して、好きなように生きてみたいと思うことだってある。
でも、実際に全部捨てられるかと聞かれたら、答えはNOだ。
大切な人がいるからこそ、自由にできないこともある。でも、その人たちがいるからこそ、頑張れることもある。
クリストファーのような生き方を羨ましいと思いながら、僕はやっぱり今あるつながりを手放したくない。
なんとも勝手な話だけど、それが正直な気持ちだ。
旅先で出会った人たち|一人になりたいのに、誰かを求めている
この映画で印象に残るのは、アラスカへ向かう途中で出会う人たちとの交流だ。
クリストファーは旅の途中で、ジャンとレイニー、ウェイン、そしてロン・フランツなど、さまざまな人と出会う。
彼らはクリストファーを温かく迎え入れ、食事を与えたり、仕事を紹介したり、ときには家族のように接してくれる。
特に心に残ったのが、ロン・フランツとの関係だ。
ロンは大切な人を失い、孤独を抱えて生きている老人。クリストファーに対して、まるで孫のような愛情を注いでいく。
そして、彼を養子にしたいとまで考える。
ここは本当に切ない。
ロンの気持ちを考えれば、もう少しそばにいてあげてもいいじゃないかと思う。せっかく自分を大切にしてくれる人と出会えたのに、なぜまた離れていってしまうのか。
僕だったら、そんなふうに自分を必要としてくれる人がいたら、嬉しいと思う。
もちろん、クリストファーにはクリストファーの考えがある。誰かに頼らず、自分の足で生きていきたいという気持ちもわかる。
でも、彼は本当に一人になりたかったのだろうか。
旅先では人と出会い、話をし、親切にされることを受け入れている。人とのつながりを完全に拒絶しているわけではない。
むしろ、誰かと一緒にいる時間を楽しんでいるようにも見える。
ここが面白いところだ。
一人になりたいのに、誰かと一緒にいたい。自由でいたいのに、自分を大切にしてくれる人がいると嬉しい。
実は僕自身にも、そんなところがある。
一人旅は好きだし、自分のペースで行動できるのは最高だ。でも、ずっと一人でいるのは寂しい。きれいな景色を見れば誰かに話したくなるし、おいしいものを食べれば一緒に楽しみたいと思う。
だから、クリストファーの気持ちは少しわかる。
ただ、彼の場合は人との距離の取り方が極端すぎる。
自由を手に入れるために、人の優しさまで置いていってしまう。その姿を見ると、羨ましさよりも寂しさが勝ってしまう場面もあった。
アラスカの大自然と衝撃の結末|自由には責任もついてくる
そして、クリストファーが目指したアラスカ。
広大な自然の中で、誰にも邪魔されずに生きる。彼にとって、そこは本当の自由を手に入れられる場所だったのだろう。
このあたりの映像は本当に素晴らしい。
大自然の景色を見ていると、僕もこんな場所へ行ってみたいと思う。日常の細かいことなんて、全部忘れてしまいそうだ。
でも、自然は人間の都合など考えてくれない。
食べ物を手に入れることも、天候の変化に対応することも簡単ではない。街で暮らしていれば当たり前にあるものが、ここでは命に関わる。
観ていて、何度も「もう少し準備しておけばよかったのに」と思った。
自由を求める気持ちはわかる。でも、勢いだけで自然の中に飛び込むのは危険だ。
ここは少し厳しい言い方になるけれど、彼の行動には無謀な部分もあったと思う。
そして、待っていたのはあまりにも悲しい結末だった。
この作品が実話を基にしていると知ると、余計に胸が苦しくなる。
ちなみに、クリストファーがアラスカで生活した場所は、廃棄されたバス。映画の中でも象徴的な場所として登場するが、実際に彼が過ごした場所でもある。
あれほど憧れていた自由を手に入れたはずなのに、最後には自然の厳しさに追い詰められていく。
彼は最後に何を考えていたのだろう。
もっと生きたかったのか。誰かに会いたかったのか。それとも、自分の選んだ人生に納得していたのか。
本当のところは本人にしかわからない。
ただ、僕は彼の最後を美しい冒険物語として片づけたくない。
自由を求めることは素晴らしい。でも、そのために命を失ってしまったことは、やっぱり悲しい。
「幸せは分かち合ってこそ本物」僕はやっぱり誰かと生きていきたい
この映画で一番心に残った言葉がある。
「Happiness only real when shared」
幸せは、分かち合ってこそ本物。
クリストファーが最後にたどり着いた答えだ。
あれほど一人で生きることを望んでいた彼が、最後にこの言葉に行き着く。
なんとも皮肉な話だと思う。
もし彼が最初からこの気持ちに気づいていたら、人生は違っていたのだろうか。
いや、そんな簡単な話ではないかもしれない。彼には彼なりの苦しみがあり、自分で確かめたいことがあったのだろう。
それでも、僕はこの言葉に強く共感する。
旅先で見た素晴らしい景色も、おいしい食事も、誰かと分かち合うことで、さらに思い出深いものになる。
もちろん、一人で楽しむ時間も必要だ。誰にも気を使わず、自分の好きなように過ごす時間は大切だと思う。
でも、ずっと一人でいいとは思わない。
家族やパートナーがいて、帰る場所があって、自分の話を聞いてくれる人がいる。それは決して当たり前のことではない。
毎日一緒にいれば、腹が立つこともあるし、一人になりたいと思うこともある。それでも、いざというときにそばにいてくれる人の存在は大きい。
だから僕は、クリストファーの生き方が羨ましい。
でも、彼のようには生きられない。
自由を求めて旅に出たい気持ちと、大切な人のそばにいたい気持ち。その両方が自分の中にある。
どちらか一つを選べと言われても、たぶん選べない。
この映画は、自由に生きることの素晴らしさと、その代償を見せてくれる。そして、人とのつながりがどれほど大切なのかも教えてくれる。
観終わったあと、クリストファーのことを考えながら、羨ましいような、腹立たしいような、寂しいような気持ちになった。
でも、そんなふうにいろいろな感情が残る映画は、やっぱりいい映画なんだと思う。
僕はこれからも旅をしたい。
知らない景色を見て、おいしいものを食べて、自由な時間を楽しみたい。
ただ、その楽しさを誰かと分かち合える人生でありたい。
『イントゥ・ザ・ワイルド』は、そんな自分の矛盾した気持ちを、改めて考えさせてくれる作品だった。

コメント