映画『すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』感想・ネタバレ考察|結末に涙?ひよこ?が教えてくれる居場所の大切さ

映画『すみっコぐらし』の感想|この映画、子ども向けだと思って油断してはいけない

1. すみっコにいるのが好き。その気持ち、ちょっと分かる気がする

正直に言うと、『すみっコぐらし』と聞いて、最初から深いテーマを期待する人は、そんなに多くないんじゃないだろうか。

連れて行かれて観たけど、面白い。大人でも面白い。なんなら大人が面白い。

かわいいキャラクターが出てきて、みんなで冒険して、最後は仲良くハッピーエンド。まあ、そんな感じかな、と。

ところが、この映画はちょっと違う。

もちろん、見た目はかわいい。しろくま、ぺんぎん?、とんかつ、ねこ、とかげ。それぞれに個性があって、眺めているだけでも癒やされる。

でも、よく考えてみると、このキャラクターたちは、みんな少しずつ自信がなかったり、何かを気にしていたりする。

寒がりで人見知りのしろくま。自分が本当にぺんぎんなのか分からない、ぺんぎん?。食べ残しのとんかつ。人目を気にするねこ。そして、正体を隠して暮らしているとかげ。

なんだか、ずいぶん事情を抱えた連中である(笑)。

普通のアニメなら、主人公たちが自信をつけて、苦手なものを克服して、最後には立派に成長する。そんな展開になりそうなものだ。

でも、すみっコたちは、無理に自分を大きく見せようとしない。

すみっこにいると落ち着く。目立つのは苦手。できれば、あまり騒がずに暮らしたい。

これって、別に悪いことじゃない。

世の中には、いつも前向きで、社交的で、みんなの中心にいたい人ばかりがいるわけじゃない。大勢の中にいると疲れる人もいるし、自分の居場所を探すのに時間がかかる人もいる。

僕だって、何でもかんでも前に出ればいいとは思わない。

若い頃は、周りと比べて、自分がどう見られているかを気にすることもあるだろう。でも、年齢を重ねてくると、無理をしてまで誰かに合わせる必要はないんじゃないか、と思うことも増えてくる。

すみっコたちを見ていると、そんな気持ちになる。

真ん中にいなくてもいい。目立たなくてもいい。自分が落ち着ける場所があれば、それでいい。

この映画は、そんな当たり前だけど忘れがちなことを、かわいらしいキャラクターたちを通して伝えてくれる。

2. 絵本の世界で出会った、ひとりぼっちの「ひよこ?」

物語は、すみっコたちがいつもの喫茶店の地下室で、古びた飛び出す絵本を見つけるところから始まる。

絵本の中に吸い込まれたすみっコたちは、桃太郎や人魚姫など、さまざまな物語の世界を冒険することになる。

そこで出会うのが、自分が誰なのかも、どこから来たのかも分からない「ひよこ?」だ

このひよこ?が、物語の大切な存在になっている。

自分が何者なのか分からない。自分の帰る場所も分からない。仲間がいるのかどうかさえ分からない。

考えてみると、これはかなり心細い状況だ。

僕たちは普段、何気なく「家に帰る」とか「自分の居場所がある」とか言っている。でも、帰る場所があるというのは、決して当たり前のことではない。

自分を知ってくれている人がいる。自分のことを待ってくれている人がいる。何かあったときに戻れる場所がある。

それだけで、人はずいぶん救われるものだと思う。

反対に、自分がどこにも必要とされていないと感じたときの寂しさは、なかなか簡単には消えない。

ひよこ?は、まさにそんな存在だ。

そして、すみっコたちは、この小さな仲間のために行動する。

ここがいい。

自分たちだって、決して何もかも満たされているわけではない。むしろ、それぞれに悩みや弱さを抱えている。それなのに、ひとりぼっちの仲間を放っておけない。

誰かを助けるのに、立派な人間である必要はないのだ。

自分自身も不器用で、うまくできないことがあって、それでも誰かのために何かをしようとする。

その姿に、僕は温かいものを感じた。

人間関係というのは、つい損得で考えてしまうことがある。自分に何かを返してくれる人、自分にとって役に立つ人、付き合っていて楽な人。そんな基準で相手を見てしまうこともあるだろう。

でも、本当に大切なのは、相手が何を返してくれるかではなく、困っているときに手を差し伸べられるかどうかじゃないだろうか。

ひよこ?の存在は、そんなことを考えさせてくれる。

3. かわいい映画なのに、なぜ大人の心に刺さるのか?

この映画を観ていて、少し不思議に感じることがある。

登場人物たちは、長いセリフで自分の悩みを語るわけではない。大げさに人生を説くわけでもない。それなのに、こちらの心に引っかかるものがある。

その理由は、すみっコたちの姿が、僕たちの普段の生活とどこか重なるからではないだろうか。

学校や職場で、周囲にうまくなじめない。自分だけが取り残されている気がする。みんなが普通にできていることが、自分にはできない。

そんな経験をしたことがある人は、決して少なくないはずだ。

しかも、やっかいなのは、年齢を重ねればそうした悩みが全部なくなるわけではないということ。

大人になれば、仕事ができるようになり、家庭を持ち、人付き合いもうまくなって、何でも平気になる。そんなふうに思われがちだが、実際はそうでもない。

表面上は普通に暮らしていても、心の中では人に言えない悩みを抱えている人がいる。

周囲から見れば何の問題もなさそうなのに、本人は自分の居場所がないと感じていることだってある。

SNSを開けば、誰かの楽しそうな生活や成功が目に入る。仕事で活躍している人、充実した家庭を築いている人、人生を思いどおりに進めているように見える人。

それと自分を比べて、なんだか情けなくなる。

そんなときに、「もっと頑張れ」「自信を持て」と言われても、かえって疲れてしまうことがある。

必要なのは、いつも自分を変えようとすることではなく、今の自分でも安心できる場所を見つけることなのかもしれない。

この映画は、そこを押しつけがましくなく描いている。

すみっこが好きなら、すみっこにいればいい。無理に真ん中へ出ていかなくてもいい。

もちろん、苦手なことに挑戦するのも大切だ。でも、苦手なことがあるからといって、自分の価値まで低くなるわけじゃない。

人にはそれぞれ、向いている場所がある。

そう考えると、すみっコぐらしという作品は、単なる癒やし系キャラクターの物語ではない。周囲と同じように生きられない人にも、ちゃんと居場所があっていいのだと伝えてくれる物語なのだと思う。

4. 【ネタバレあり】ひよこ?の結末が切ない。それでも、この物語が好きだ

ここからは、結末に触れる。

ひよこ?の家を探すために、すみっコたちは一生懸命に協力する。ところが、物語が進むにつれて、ひよこ?が抱えている事情が明らかになっていく。

ひよこ?は、絵本の中に描かれた、どのお話にも居場所を持てない存在だった。

だからこそ、すみっコたちと一緒に過ごす時間には、特別な意味がある。

自分のために動いてくれる仲間がいる。自分を受け入れてくれる仲間がいる。ひとりぼっちだった存在が、誰かとつながることができた。

それなのに、物語はただ都合のいい結末を用意してくれるわけではない。

この展開が、なかなか切ない。

せっかく仲間ができたのに。せっかく自分のことを気にかけてくれる相手が見つかったのに。

そう思うと、胸が痛くなる。

でも、ここで僕が感じたのは、寂しさだけではなかった。

誰かと過ごした時間は、その後ずっと一緒にいられなかったとしても、なかったことにはならない。

自分のことを心配してくれた人がいた。自分のために一生懸命になってくれた人がいた。そんな記憶が残るだけでも、人は少し変われるのかもしれない。

現実の人間関係だって、いつも思いどおりになるわけではない。

仲良くなった人と離れることもある。大切に思っていた相手と疎遠になることもある。もう会えない人だっている。

だからといって、その人と過ごした時間まで無意味だったことにはならない。

出会わなければよかった、と思うような別れもあるかもしれない。でも、出会ったからこそ知ることができた優しさもある。

この映画は、そんなことを静かに思い出させてくれる。

そして、すみっコたちの優しさがいい。相手を助けたいという気持ちに、難しい理屈は必要ない。目の前に困っている仲間がいるから、何とかしてあげたい。それだけなのだ。

大人になると、つい物事を複雑に考えてしまう。

でも、本当は、誰かを大切に思う気持ちくらい、もっと単純でいいのかもしれない。

5. 『映画 すみっコぐらし』は、疲れた大人にこそ観てほしい

『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』は、上映時間が約66分と比較的短い作品だ。

それでも、観終わったあとに残るものは、思った以上に大きい。

かわいいキャラクターたちが活躍する冒険物語でありながら、その奥には、孤独や居場所、誰かとつながることの大切さが描かれている。

僕は、こういう作品を子ども向けだからといって軽く見てはいけないと思う。

大人になると、映画を観るときにも、どこかで身構えてしまうことがある。難しいテーマがあるか、演技がすごいか、展開に驚きがあるか。そんなことを考えながら作品を評価する。

もちろん、それも映画の楽しみ方の一つだ。

でも、ときには何も難しく考えず、素直に心を動かされる作品を観るのもいい。

かわいいな、と笑って、ちょっと切なくなって、

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