1. ただの銀行強盗映画だと思ったら、話がどんどんヤバくなる
『バンク・ジョブ』は、ジェイソン・ステイサム主演のクライムサスペンスだ。
銀行の金庫を破って大金を奪う。こう聞くと、よくある強盗映画を想像するかもしれない。計画を立てて、仲間を集めて、警察の裏をかいて、最後に大金を手に入れる。そんな展開だ。
ところが、この映画はちょっと違う。
金庫を開けたことで、とんでもない秘密まで掘り起こしてしまうのだ。
しかも、その秘密に関わっているのが、普通の犯罪者だけではない。表向きは立派な顔をしている連中まで出てくる。むしろ、そっちのほうがよっぽど怖い。
最初は「うまく盗み出せるのか?」という目線で観ているのに、いつの間にか「これ、最後まで無事でいられるのか?」という心配に変わっていく。
こういう展開は好きだ。
派手な爆発や銃撃戦で押し切るのではなく、盗み出したものが何なのか、誰がそれを取り戻そうとしているのか。その事情が分かってくるほど、物語が面白くなっていく。
銀行強盗を描いた映画なのに、金の問題だけでは済まない。そこが『バンク・ジョブ』の面白いところだと思う。
2. ジェイソン・ステイサムが、いつもの無敵キャラとは少し違う
主演はジェイソン・ステイサム。
この人が出ていると、どうしても「最後は力ずくで何とかするんじゃないか」と期待してしまう(笑)。
アクション映画では、強い相手に囲まれても平然としていて、敵を次々と倒していく姿がおなじみだ。ところが『バンク・ジョブ』では、腕っぷしだけで何でも解決できるわけではない。
主人公のテリーは、裏社会の大物でも、凄腕の殺し屋でもない。車の販売などをしている、ごく普通の男だ。生活のために危ない計画へと足を踏み入れるが、そこで待っていたのは、想像していたような単純な犯罪ではなかった。
相手が悪ければ、正面からぶつかっても勝てない。そもそも、誰を信用していいのかさえ分からない。
この状況がいい。
何でもできる主人公が敵をなぎ倒す映画も気持ちいいけれど、普通の人間が引き返せない場所まで来てしまい、知恵を絞って生き残ろうとする話には、また別の緊張感がある。
ステイサムの魅力はアクションだけではない。こういう、追い詰められた人間の必死さが見える役も似合っていると思う。
3. 本当に怖いのは、裏社会よりも権力を持つ人間なのかもしれない
この映画で印象に残るのは、銀行の金庫に眠っていた秘密だ。
盗まれたものを取り戻したい人間がいる。秘密が表に出ると困る人間がいる。そして、その中には、普通なら犯罪者を取り締まる側にいるはずの人間まで絡んでくる。
ここが何とも嫌な感じなのだ。
裏社会の人間なら、危険なことをしていると分かりやすい。ところが、社会的な地位や権力を持っている人間は、表向きには立派な顔をしている。そんな人物が自分の立場を守るために動き始めたら、いったい誰が正義を守ってくれるのか。
もちろん、映画なので誇張された部分もあるだろう。ただ、観ていると「世の中には、表に出てほしくない秘密というものがあるんだろうな」と考えてしまう。
しかも、こうした秘密を知ってしまった側は、簡単には逃げられない。
大金を手に入れたら人生が変わる。そんな夢を抱いていたはずなのに、実際には金よりも面倒なものを背負い込んでしまう。欲を出した代償としては、あまりにも大きい。
この映画が単なる強盗劇で終わらないのは、犯罪のスリルだけでなく、権力と秘密が絡み合う不気味さを描いているからだと思う。
4. 実話をもとにしているからこそ、妙に生々しい
『バンク・ジョブ』は、1971年にロンドンで起きた貸金庫強盗事件を題材にしている。
ただし、映画は事件をそのまま記録したドキュメンタリーではない。実際の事件をベースにしながら、登場人物や出来事には脚色が加えられている。
それでも「こんな話、全部作り話です」と言い切れないところが、この作品の面白さだ。
映画の中では、金庫の中身をめぐって、犯罪者だけでなく、政治や権力に関わる秘密まで絡んでくる。どこまでが事実で、どこからが映画としての創作なのか。そう考えながら観るのも楽しみ方のひとつだろう。
ちなみに、実話をもとにした犯罪映画には、派手なフィクションとは違う魅力がある。現実の事件が出発点だと思うと、登場人物の行動や、事件の後ろに隠れている事情が妙に生々しく感じられるのだ。
もちろん、実際の事件と映画の内容を同じものとして受け取るのは違う。そこは分けて考える必要がある。
でも、現実の事件を調べたくなるような映画は、それだけ観客の興味を引き出しているということでもある。
『バンク・ジョブ』も、観終わったあとに「本当の事件はどうだったんだろう?」と気になってしまう作品だ。
5. 派手さよりも、最後まで気が抜けない展開を楽しむ映画
『バンク・ジョブ』は、ひたすらアクションで盛り上げる映画ではない。
仲間たちが金庫を狙い、計画が動き出し、思いもよらない秘密が明らかになっていく。そこから先は、誰が味方で誰が敵なのか、何が明るみに出るのかという緊張感が続く。
観ている側も、単純に「強盗が成功すればいい」とは思えなくなってくる。
金を手に入れたとしても、そのせいで命を狙われたら意味がない。秘密を握っていても、それを公表できるとは限らない。知ってしまったこと自体が、危険につながる場合もある。
そう考えると、欲しかったものを手に入れることが、必ずしも幸せにつながるわけではないんだよな。
人間、目の前に大金があれば心が動く。これはきれいごとだけでは済まないと思う。ただ、その金の向こう側に何があるのかまでは、なかなか考えないものだ。
この映画は、そんな人間の欲と、秘密を守ろうとする人間の怖さを、犯罪サスペンスとしてうまくまとめている。
ジェイソン・ステイサムのアクションを期待して観てもいいし、実話をもとにしたクライム映画として観ても楽しめる。
派手な銃撃戦よりも、計画が少しずつ狂っていく緊張感や、金庫の中身をめぐる人間模様が好きな人にはおすすめしたい。
銀行の金庫を開けたら、大金だけでなく、とんでもない秘密まで出てきた。
いや、これはもう、盗んだ金を数えて喜んでいる場合じゃない(笑)。
そんなことを思わせてくれる、最後まで目が離せない犯罪サスペンスだった。
