1. 最初から不穏な空気が漂う、閉鎖空間の恐怖
2002年公開の映画『バイオハザード』
ゲームを原作にした映画と聞くと、ゲームの世界をどこまで再現できているか、そんなところに注目しがちだと思う。ちなみに、僕はいまだにゲームやってます(笑)
でも、この作品の面白さは、それだけじゃない。
舞台となるのは、巨大企業アンブレラ社が極秘に運営する地下研究施設「ハイブ」。ある事件によって施設内にウイルスが広がり、コンピューターのレッドクイーンが施設を封鎖してしまう。
そこへ送り込まれた部隊が目にするのは、誰もいない研究所と、何かがおかしいという不気味な空気。そして、死んだはずなのに動き出す人間たち。
この映画、序盤からなかなか嫌な雰囲気を作ってくる。
暗い廊下、無機質な施設、突然閉まる扉。どこから何が出てくるのか分からない。こういう場所には、できれば一生足を踏み入れたくない。
個人的には、ゾンビが大勢出てくる場面よりも、何も起きていない静かな場面のほうが怖かったりする。
何かが起きると分かっているのに、なかなか起きない。あの時間が妙に落ち着かないんだよね。
しかも、逃げ道がない地下施設。外に出れば助かるかもしれないのに、その出口すら簡単には見つからない。
こういう閉鎖空間の恐怖を、SFとホラーを組み合わせながら見せてくれるのが本作の魅力だと思う。
2. ミラ・ジョヴォヴィッチのアリスが、とにかくカッコいい
この映画を語るうえで外せないのが、主人公アリスを演じるミラ・ジョヴォヴィッチ。
目を覚ました彼女は記憶を失っていて、自分が何者なのかも分からない。そこへ特殊部隊が現れ、地下研究施設で起きた事件に巻き込まれていく。
普通なら、状況が分からずに怯えていてもおかしくない。
ところがアリスは、危険な状況に追い込まれても、ただ守られるだけの女性ではない。状況を理解しながら戦い、少しずつ自分の記憶を取り戻していく。
この強さがいい。
もちろん、映画だからこそ成立する部分もあるし、現実の人間があんな動きをできるのかという話は別。でも、観ている側としては、やっぱり頼もしい。
それに、ミラ・ジョヴォヴィッチの表情が印象的なんだよね。
記憶が戻らない不安、目の前で起こる惨劇への戸惑い、そして危険に立ち向かうときの鋭い目つき。
セリフで全部を説明しなくても、表情や動きで伝わってくるものがある。
個人的には、ただ強いだけの主人公よりも、何が起きているのか分からないまま、それでも前に進む主人公のほうが感情移入しやすい。
最初から何でも知っていて、何でもできる人間より、迷いながら強くなっていく人間のほうが応援したくなるからだ。
アリスは、まさにそんな主人公だった。
3. ゾンビよりも怖い? レッドクイーンという存在
本作で面白いのは、ゾンビだけが脅威ではないところ。
地下施設を管理している人工知能、レッドクイーンも、物語の重要な存在になっている。
人間を守るために作られたはずのシステムが、感染を防ぐために施設内の人間を犠牲にする。
こう聞くと、なんとも皮肉な話だ。
レッドクイーンの判断は、完全に間違っているとも言い切れない。ウイルスが外部に広がれば、もっと多くの人間が犠牲になる可能性があるからだ。
つまり、施設の人間を犠牲にすることで、外の世界を守ろうとしている。
ただ、そこには人間らしい感情がない。
目の前にいる人間がどれだけ助けを求めても、全体を守るという目的が優先される。理屈としては理解できても、実際に自分がその施設に閉じ込められたら、たまったものではない。
しかも、レッドクイーンはかわいらしい少女の姿で現れる。この見た目と、冷徹な判断とのギャップが不気味なんだよね。
怖い顔をした怪物なら、最初から警戒できる。
でも、見た目は普通なのに、こちらの命を何とも思っていない存在のほうが、かえって恐ろしい。
今の時代に観ると、人間が作ったシステムに人間自身が追い詰められるという設定も、なかなか考えさせられる。
便利なものを作り、効率を求め、すべてを管理しようとする。
ところが、ひとたび制御できなくなれば、その便利さが一転して脅威になる。
そんな皮肉も感じられる作品だと思う。
4. 結局、人間が一番信用できないのかもしれない
ゾンビ映画というと、感染した人間から逃げたり、襲ってくる怪物と戦ったりする場面に目が向きやすい。
もちろん、本作にもそうした見どころはたくさんある。
ただ、物語が進むにつれて気になってくるのは、ウイルスそのものよりも、それを取り巻く人間たちの事情だ。
そもそも、なぜこんな事態が起きたのか。誰が何を隠しているのか。そして、誰を信じればいいのか。
記憶を失ったアリスは、自分自身についてさえ確信が持てない。目の前にいる仲間たちも、必ずしもすべてを正直に話しているわけではない。
そんな状況で、生き残るためには誰かと協力しなければならない。
でも、信用した相手が自分を裏切るかもしれない。
これって、ゾンビに襲われる恐怖とはまた違う怖さだと思う。
ゾンビなら、襲ってくることが分かれば逃げるなり戦うなりできる。ところが人間の場合、何を考えているのか分からない。
助けてくれると思っていた相手が、実は自分のことしか考えていなかった。そんなことが分かった瞬間、恐怖だけではなく怒りも湧いてくる。
大げさに言えば、ゾンビは身体を襲ってくるけれど、人間の裏切りは心まで傷つける。
もっとも、この映画は人間の裏切りだけを描く重いドラマではない。そこにアクションやホラーの面白さが加わっているから、難しく考えすぎずに楽しめる。
それでも、観終わったあとに「本当に怖いのは何だったんだろう」と考えたくなるところは、単なるゾンビ映画では終わらない魅力だと思う。
5. 今観ても楽しめる、シリーズの原点
『バイオハザード』は、ゲームを原作とした映画として、独自の世界観をしっかり作り上げている。
ゲームをそのまま映像化するのではなく、映画ならではの主人公アリスを中心に物語を展開しているところも特徴的だ。
閉鎖された研究施設、得体の知れないウイルス、制御不能になった人工知能、そして次々と襲いかかる感染者たち。
こうした要素が組み合わさることで、最後まで気の抜けない展開が続いていく。
もちろん、今観るとCGや演出に時代を感じる部分はある。登場人物の行動に「いや、そこはもう少し慎重に動こうよ」とツッコミを入れたくなる場面もある。
でも、映画なんて、少しくらいツッコミながら観るのも楽しみのひとつだ。
すべてが現実的で、すべてに納得できなければ面白くないというわけでもない。
怖い場面では緊張し、アクションでは気分が上がり、先の読めない展開に引き込まれる。そういう映画としての楽しさが、この作品にはある。
そして、ラストに待っているのは、すべてが解決して安心できるような結末ではない。
むしろ、ここから先はいったいどうなってしまうのか。そんな不安を残して物語が終わる。
観客をすっきりさせるよりも、次の展開が気になる終わり方を選んでいるところも、シリーズ第1作らしい。
続編が作られていった理由も、なんとなく分かる気がする。
まとめ|恐怖とアクション、その先にある人間の怖さ
映画『バイオハザード』は、ゾンビと戦うアクション映画でありながら、人間の欲望や企業の隠蔽、そして管理された世界の危うさも描いた作品だ。
難しいテーマを前面に押し出すというより、スリルのある物語を楽しんでいるうちに、いろいろなことを考えさせられる。
個人的には、ミラ・ジョヴォヴィッチ演じるアリスの存在感と、地下施設の閉塞感が特に印象に残った。
何が起きているのか分からない。誰を信用していいのかも分からない。それでも、生き残るためには前に進むしかない。
こういう状況に置かれたら、自分だったらどうするだろう。
たぶん、最初の数分でパニックになっていると思う。できれば戦う側ではなく、安全な場所で事情を聞いている側にいたいものだ。
とはいえ、そんな安全な場所があるのかどうかも分からないのが、この映画の怖いところ。
ゾンビ映画が好きな人はもちろん、閉鎖空間を舞台にしたサスペンスや、先の読めないアクションが好きな人にもおすすめしたい一本だ。
そして、まだシリーズを観たことがない人なら、まずはこの第1作から観てみるのがいいと思う。
すべての始まりとなる地下研究施設での惨劇。
ここからアリスの長い戦いが始まる。

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